たなかみさきのロマンポルノ季候
LAST UPDATE
2021.06.25
イラストレーターたなかみさきが
日活ロマンポルノの映画の中から
おすすめの作品を
四季折々の感性で描く
月刊イラストコラム。
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2021.06.25
「白い指の戯れ」
その名の通りに、戯れる指の動きをしつこいくらい丁寧に映しとっている作品でした。
指の戯れと聞くと愛撫のことだろうと思ったのですが、
この作品ではそれだけではなく、スリや窃盗も意味する言葉になっていて
戯れと言いつつも命をかけて戯れる刹那的なさまは、どうしても魅力的に見えてしまう。
悪びれもしないし、教訓的でも、お説教ぽくもない。
今回描いたイラストは、実際にあるシーンを描いたものです。
指の描写が美しかったのでいくつかスケッチをしたのですが、
やはりこのシーンが頭から離れなくて、描かされた!という印象です。
この連載は月1回更新でお届けします。
次回2021年7月30日(金)掲載予定
1972年キネマ旬報ベスト・テン第10位
脚本賞を神代辰巳、主演女優賞を伊佐山ひろ子が獲得
村川透がデビュー作として監督したニューシネマの記念碑!
新宿。二人はほんの少し前に知り合ったばかりだった。ゆき十九歳。二郎二十二歳。二郎はやさしくゆきを抱いた。ゆきは少しばかりの痛みを感じたがとても幸せだった。ゆきがいつもの喫茶店で二郎を待っていると、洋子が来て二郎が捕ったと知らされた。二郎は泥棒だと分かった。洋子はゆきに優しかった。洋子のアパートに行くと、自然に唇を奪われた。洋子の指先はゆきの豊かな曲線を辿っていた。
数日後、例の喫茶店でゆきは拓に呼びとめられた。「二郎からあんたのことを聞いたよ留置場で」。ゆきは拓にひかれ始めていった。拓はスリだった。拓の指先は恍惚感を与えた。そしてゆきもいつの間にか集団スリの片捧をかついでいくのだった。拓の愛は激しかった。ゆきは拓を離すまいと思った。
ところがある日、拓はゆきを仲間に抱かせた。でも、ゆきは泣かなかった。さびしさのあまり一人でスリを働いていたゆきに、刑事の立川が近づいた。刑事とも知らずにゆきは身の上話をするのだった。ゆきは泳がされ始めていた…。
出演:伊佐山ひろ子/荒木一郎/谷本一/石堂洋子/五條博/足立義夫/木島一郎/粟津號