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ヴェネツィア国際映画祭『㊙色情めす市場』 4Kデジタル復元版 が選出!

日活株式会社製作、1974年劇場公開の田中登監督ロマンポルノ作品『㊙色情めす市場』4Kデジタル復元版が、発表・開催が延期となっていた第78回ヴェネツィア国際映画祭のクラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出され、現地で210日から526日まで開催される映画祭「CLASSICI FUORI MOSTRA 2022」において512日に上映されることが決定しました。

「ヴェニス・クラシックス」は2012年に設立されたヴェネツィア国際映画祭の一部門で、世界の映画関係者によって過去1年間に復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品が選出され、上映されます。日本映画はこれまでに『七人の侍』(黒澤明監督)、『お茶漬けの味』(小津安二郎監督)、『山椒大夫』(溝口健二監督)、『無法松の一生』(稲垣浩監督)、『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)など、名だたる巨匠の作品の復元版が選出されています。

昨年9月にヴェネツィア国際映画祭が開催された際には、新型コロナウィルスの感染拡大により、クラシック部門の選出作品の発表や開催が延期される事態となっていました。しかしこの度、ヴェネツィア国際映画祭と主催団体を同じにするクラシック作品の映画祭CLASSICI FUORI MOSTRAが2月よりヴェネチアで開催されることが決定。昨年のヴェニス・クラシックスに選出された作品も満を持して発表され、CLASSICI FUORI MOSTRAの中で上映されることになりました。『㊙色情めす市場』は「1970年代の日本のピンク映画の中で最高傑作の1つ」と紹介されています。

ヴェニス・クラシックスにおける日活作品の選出は今回が初めてで、日活ロマンポルノ作品の世界三大映画祭での選出も今回が初となります。

mesuichiba_01.png 『㊙色情めす市場』はロマンポルノを代表する監督の1人、田中登の代表作。公開時、一般映画も含めた「映画芸術」誌ベストテンで第3位にランクイン。大阪・釜ヶ崎を舞台に、たくましく生きる人々の姿を描いた映画史に残る傑作。1000本以上あるロマンポルノ作品の中で最高傑作とする映画人も多く、特に愛されてきた一作です。


【田中 登】 1937年8月15日-2006年10月4日
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長野県白馬村生まれ。明治大学文学部に在学中、黒澤明監督『用心棒』などの作品にアルバイトとして参加する。
1961年、大学卒業後に助監督として日活に入社。同期には小沼勝結城良煕小原宏裕がいる。

助監督として鈴木清順今村昌平西河克己舛田利雄小澤啓一をはじめ日活在籍監督の多くにつき経験を積み、日活がロマンポルノに転向後、1972年『花弁のしずく』で監督デビュー。当初より、色彩感覚や風景描写、シュールなモンタージュなど独特のセンスを発揮し高い注目を集め、7作目の『㊙女郎責め地獄』(1973年)で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。その後も『㊙色情めす市場』(1974年)を始めとする傑作を次々に発表し、日本映画界に衝撃を与えた。『実録阿部定』(1975年)、『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年)、『人妻集団暴行致死事件』(1978年)は、キネマ旬報ベストテンに選出され、日活ロマンポルノにおけるエース監督としての地位を確立。また、東映に招聘され『神戸国際ギャング』(1975年)、『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』(1976年)の監督をつとめつつ、ロマンポルノ作品も引き続き発表した。1980年代以降は、2時間ドラマを中心にテレビ作品へと活躍の場を拡大し、映画と並行して数多くのテレビドラマ作品を手掛けた。

強いこだわりを持って作品を作り上げる姿勢を貫き、生涯で25本の映画と78本のテレビ作品を残した。日活ロマンポルノを象徴する監督の一人である。

【フィルモグラフィ】
花弁のしずく1972/ 牝猫たちの夜1972/ 夜汽車の女1972/ 好色家族 狐と狸1972/ 官能教室 愛のテクニック1972/ 昼下りの情事 変身1973/ ㊙女郎責め地獄1973/ 真夜中の妖精1973/ 女教師 私生活1973/ ㊙色情めす市場1974/ 実録阿部定1975/ 神戸国際ギャング(1975/ 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者1976/ 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録(1976/ 発禁本「美人乱舞」より 責める1977/ 女教師1977/ 人妻集団暴行致死事件1978/ ピンクサロン 好色五人女1978/ 天使のはらわた 名美1979/ 愛欲の標的1979/ハードスキャンダル 性の漂流者1980/ もっと激しくもっとつよく1981/ 丑三つの村(1983/ 蕾の眺め1986/ 妖女伝説’881988


【第78ヴェネツィア国際映画祭について】
イタリアのヴェネツィアで開催される映画祭。今回は現地91日~11日に開催された。世界三大映画祭の一つで、コンペティション部門を含む複数の部門からなる。前回コンペティション部門に出品された黒沢清監督『スパイの妻』が最高賞に次ぐ銀獅子賞を受賞し、大きな話題を呼んだ。第78回となる今回は、日本から湯浅政明監督『犬王』がオリゾンティ部門で上映されたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、クラシック部門の選出作品の発表と開催は延期となっていた。

■ヴェニス・クラシックス
2012年に設立されたヴェネツィア国際映画祭の一部門で、世界の映画関係者によって過去1年間で復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品が選出され、ワールドプレミア上映される。日本映画はこれまでに『七人の侍』(黒澤明監督)、『お茶漬けの味』(小津安二郎監督)、『山椒大夫』(溝口健二監督)、『無法松の一生』(稲垣浩監督)、『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)など、名だたる巨匠の作品の復元版が上映されており、同部門における日活作品の選出は今回が初めて。また、日活ロマンポルノ作品としても三大映画祭での選出は今回が初となる。今回選出された他の作品にウィリアム・フリードキン監督『フレンチ・コネクション』などがある。

■CLASSICI FUORI MOSTRA(クラシッチ・フォーリ・モストラ)
2020年からヴェネチアで開催されている、復元映画の映画祭。今年は現地210日から526日に開催される。主催はヴェネツィア国際映画祭と同じくヴェネツィア・ビエンナーレで、同団体映画部門の代表であり、ヴェネツィア国際映画祭のディレクターも務めるアルベルト・バルベーラ氏が中心となって発足した。ヴェニス・クラシックスの盛況を受け、映画史に名を刻んだ過去の名作を更に多く観客に届けると同時に、現在活動している映画製作者にインスピレーションを与え続けることを目的に設立された。また、名作映画の上映を通じて学生に教育的な豊かさを提供することも目的の1つとしている。
毎年10数作品が上映され、今回は14作品が上映される。過去の上映作品に『エイリアン』(リドリー・スコット監督)、『グッドフェローズ』(マーティン・スコセッシ監督)、『地下水道』(アンジェイ・ワイダ監督)等がある。第2回となる昨年は、パンデミックの影響を受けて急遽ボローニャでの開催となった2020年のヴェニス・クラシックス選出全13作品が上映され、邦画では『無法松の一生』(稲垣浩監督)と『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)が含まれた。なお、設立以降続く新型コロナウィルスの影響により、開催時期・会場は年によって異なる。

4Kデジタル復元版について】
日活株式会社が所蔵する35㎜マスターネガを素材として、2021年にデジタル復元を行ったもの。
復元:日活株式会社
デジタル修復:シネリック


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