毎月、衛星劇場にて放送されている、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する
「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」。
ロマンポルノ誕生50周年、番組誕生10周年を迎えるにあたって、過貴重な番組アーカイブから、公式書き起こし。(隔週更新予定)
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第16回「書」
第16回「日活ロマンポルノのポスターにおける[書]」
■2013年4月放送
どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー In 日活ロマンポルノ 民俗学入門」。今回はですね、「日活ロマンポルノのポスターにおける[書]」というテーマです。エロ書道について、皆さんと学んでいきたいと思います。
その時、股間がうずいた...。今宵の教材は、書体で学ぶポルノの歴史。『夜這い どてさがし』。一本の筆が織りなすエロ技場。股間が唸る匠業、ここに極まる。ソフトな刺激で責められて、シーツに綴った「筆おろし」、その瞬間から新たな歴史がはじまる。
それでは、一筆目『夜這い どてさがし』。私がその書を、参考に書かせて頂きますね。「夜這い」の場合は、当然夜に行うわけですから、少しダークなカンジで...まずここトンと打ちますよね。そして、このしんにゅう「辶」がとてもいい感じではいってますよね。「弘法は筆を選ばず」と昔から言いますけど、ここはちょっと男性器に似ているように、こういきますかね。
なんだか『どですかでん』(1970年 黒澤明監督)のタイトルっぽい字になりました(笑)。 う〜ん、ちょっと(半紙に)入らなくなってしまいましたが、そいう場合は、こう横にいれて、最後しめる。『夜這い どてさがし』完成しました!
こちらが正式なタイトルの清書ですね。私の先程書かせていただいた、この書のどこが間違いなんでしょう?ちょっと見て、自分で採点をしたいと思います。ココのとこですよね。ココがやっぱりこう流れるべきですよね。ウン、そうこれでいいですね。悪くないと思います。でも、一番初めは、何もないところから書かれたわけでね、映画を一言で表すというか、文字で表すということは、やはりこれは匠の業だということが分かりますね。
とくに70年代の日活ロマンポルノ作品のタイトルは、書が用いられていることが多いです。このサンプルのタイトルはね、この番組のスタッフの方が、キンコーズで引き延ばしたということです。キンコーズの方はきっと、「変態が来た」と思われたでしょうね(笑)。さあ、その書の数々を、見ていきたいと思います。
■ロマンポルノ名筆選〜毛筆が奏でる官能美〜
『教師 女鹿』これも良い字ですよね。普通、「女教師、鹿」じゃないでしょうか? この「女」っていう字がくさびのようで、その情念の深さを表していますよね。
そして 『淫絶海女 うずく』の「うずく」の字、これもとてもいいですよね。参観日に小学校に行ったら、教室の後ろの壁に全部「うずく」って貼り出されていたところを想像してみてください。本当にすごいですよね。ほんと力強い書でございます。
これは、1978年の作品で、時代が新しくなったのをその字で感じられますね。『時には娼婦のように』。旅先から、「今、道後温泉に来ています。君には時には娼婦のように...。」なんて、ハガキで書いて出すのはどうでしょうね。
「しゃぶり攻め」(『OL日記 しゃぶり攻め』)、これも良い字でしょ?この「攻」が『特攻大作戦』(1967年製作 ロバート・アルドリッチ監督)ですよ。いいですね。
「絶淫」(『セミドキュメント 絶淫』)、もともとこんな言葉があったのか、わかりませんけど、この枯れ葉みたいな字の感じもいいですよね。
力強さを「十三段」にもってきて「こんにゃく」のクニャクニャした優しい感じがよくでています(『十三段こんにゃく締め』)。
そしてやっぱ、書のダイナミックさといえばこれですよね「変態」、堂々変態なんだということがこの書一発でわかりますよね(笑)。(『ポルノ・レポート 変態』)
■半紙をティッシュに持ち替えて 検証『夜這い どてさがし』
今回は、『夜這い どてさがし』を上映させていただきますけども、私は昔、東京・杉並区の高円寺という街に住んでいたことがあります。そこの映画館はもう、ありませんが、僕が住んでいた頃は、高円寺の商店街に上映作品のアナウンスが流れていましてね。それが淡々として女性の声で、「ただ今〇〇劇場では、『夜這い どてさがし』『夜這い どてさがし』を上映中です」と言うんです。近所の人たちが買いものをしている中、平然と流れてる感じが、とても昭和的で良い雰囲気でした。そんな記憶にあるタイトルで、どんな映画なんだろうと思って、今回初めて見させていただきました。いやぁ、なかなかどうして、外ロケもたくさんあり、映像も素晴らしい作品でございました。
「夜這い」というのは、もはや民俗学的な言葉になっていると思います。かつて平安の貴族たちが歌会を開いていましてね、裏の目的は、それで、男女が盛り上がるというイベントだったんですけど、それを庶民がマネしようってことになったようですね。「嬥歌(かがい)」といって、良い歌を作った男には、女の人が寄って来て、その後どこかの山の中でまぐあうという。「夜這い」というのは、実は女の人側も拒否ができたと、ある文献で読んだことがあります。拒否された男は当然、落ち込んで家に帰ることもあったらしいです。
映画を見て貰えばわかるんですけど、大概、男は二人チームで行ったみたいです。窓が開けてあると、いいですよってサイン。でも、今と違って夜は本当、闇ですから注意しながら這い這いスタイルですね。
これが本当の忍び足っていうことですよね。ま、何もわざわざイラストにする事も無かったんですけど。分かって頂けたでしょうか?
そして、そのチームの先輩は必ず天狗の鈴を持っています。コレ、映画の中の話ですよ。ツンツンと突いて、相手の様子を伺ってからということでございます。
今回、脚本を、山本晋也監督が書かれているということで、とても面白い作品になってます。ラスト、引きの画で雪景色が見えている画など本当、感動しますから。さぁ、その映像の美しさに最後までじっくり御覧ください。
『夜這い どてさがし』
1979年製作、川口朱理さん主演。
『教師 女鹿』
1978年製作、栄ひとみさん主演。
『淫絶海女 うずく』
1978年製作、八城夏子さん主演。
『時には娼婦のように』
1978年製作、鹿沼えりさん主演の作品でございます。出演されている有名作詞家、なかにし礼さんの同タイトルの歌もヒットしましたよね。
※各作品はamazon、FANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です
それではあなたもグレイト余生を!
出演・構成:みうらじゅん/プロデューサー:今井亮一/ディレクター:本多克幸/製作協力:みうらじゅん事務所・日活
衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」を放送!
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