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【アーカイブ】あたしのおすすめ『ラブレター』

(当記事は2001年頃の旧サイト「日活ロマンポルノ館」に掲載されていたものです。当時と内容が異なる場合がございます)



 



「ラブレター」

-にっかつロマンポルノ10周年記念作品―



配信サイト:DMMGyaO!ストアYouTube



 



"女性も共感する"ロマンポルノの注目作。

   女のナルシシズムとアンニュイ漂う関根恵子の魅力!



 詩人・金子光晴が愛人にあてた百余通の手紙などに基づく原作を、『四季・奈津子』など女性映画の第一人者・東陽一が描いたロマンポルノ初挑戦のエロス大作。



メインの出演者までもロマンポルノ初という鮮度も懐かしい。

関根恵子(現・高橋恵子)をヒロインに、「金子光晴」役の中村嘉葎雄ほか仲谷昇、加賀まりこなどベテラン演技陣が揃い、ひと味違う情感にあふれ、"女性も共感する"作品となった<ロマンポルノ10周年記念作品>。



詩人の小田都志春が、有子の家に通い始めて6年、年齢差は30歳以上であるが「トシ兄ちゃん」「ウサギ」と呼び合う二人、という設定が興味を引く。着流しにゲタの風情の中村嘉葎雄がイイ味だ。この風来な中年は冷たかったり、優しかったり、来る日も一定しておらず、そのことが彼女を情緒不安定にさせる。



珍しくショートカットの関根恵子のナルシシズムアンニュイ漂うエロチックな魅力が、見る者の胸をサワサワと泡立たせる! (映画評論家:秋本鉄次)



<作品紹介>(公開当時のプレスシートより)



~私はある日突然、甘美な性を知った。

「女のからだは、足から頭のてっぺんまで性器になるんです」~



 



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● 原作について



「金子光晴の『通夜の客』に妙なご婦人がいた…色の白い、小柄な中年の女性だ…ただただ泣くだけで…帰りぎわ…『奥さんも悲しいでしょうが、私も悲しい』といって…街に消えた…」という前書きで始まる「金子光晴のラブレター」。



詩人・金子満晴が亡くなったのは昭和50年であった。生前、幾人もの弟子をかかえて創作活動を続け、一方では「エロじじい」とまで言われたもう一人の金子光晴。その彼を知るのは、30年ほどにわたり裏生活をともにした、このご婦人「O」さんだけである。二人の年齢差は30以上であった。

彼女「O」さんは、単なる愛人でも恋人でもなかった。「私は金子光晴の妻だったオンナです…金子光晴の童女、情婦、女弟子、愛人、恋人、妹、娘、養女でもあったオンナです…」事実Oさんは、一時期れっきとした妻であった。



この、世間には公にされなかった、詩人とは違う金子光晴のもうひとつの姿を、百通以上もの彼からの手紙をもとに、Oさんから直接聞いて書かれたのがこの「金子光晴のラブレター」です。



これはまさに、愛欲で綴るOさんの青春物語なのです。

(Oさんは現在―注:公開当時―、東京に在住する)



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● 解説



30以上も年の違う、妻ある詩人を愛したオンナ。他人に白い目で見られながら、ひとりぽっちでオトコが通ってくるのをひたすら待つ。そして二人をつなぐのは、あまりのいとおしさからくる激しい肉欲である。



「焦れ死」にも似た女の哀れを見据える、にっかつロマンポルノ・10周年記念作品。



「金子光晴のラブレター」を下地に、現代から遮断されたような二人の生活を、愛欲シーンたっぷりに描く。



出演は、成人映画初体験者ばかりである。待ち焦がれる主人公に話題の関根恵子、詩人に中村嘉葎雄、隣家の女に加賀まりこ、その別れた夫に仲谷昇、とそれぞれに適役を得た。



監督は「サード」「もう頬づえはつかない」「四季・奈津子」と話題作を撮り続け、にっかつ映画初演出の東陽一。



(映画は、物語を現代に置き換え、原作に手を加えたものである)



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● あらすじ



詩人の小田都志春が有子の家へ通い始めてもう六年経っていた。「トシ兄ちゃん」「ウサギ」と呼び合う二人が愛欲に耽るのは長くて二か、短い時は数時間余りだ。都志春が来る日は決まっておらず有子は待ちぼうけをくわされるのがしょっちゅうだった。寂しさが極に達したころ決まって彼は姿を見せるのだが、生活費だけは定期的に届けていた。



奥さんの病気の為、都志春がつきっきりの看護をしていると知った時などは、有子は寂しさで倒れてしまったほどだ。駆けつけた都市春は畳の上にビニールを敷きつめ、風呂かわりの行水をしてやった。



いつか、隣のアパートの女主人タヨの別れた夫・村井と近くの公園で話し込んだことがあった。都市春はそれを誤解して「ウサギ、浮気したな!」と興奮しながら有子の性器の近くに「とし」と刺青を彫ってしまった。



また、何の前ぶれもなく有子を戸籍に入れ、正式な妻としたことがあったが間もなく抜いてしまった。有子はそういった都市春のわがままを全て受け入れた。



なにをされても都市春が少しでも自分のそばに居てくれる事が、有子の唯一の願いだった。タヨのアパートの学生達が酔っぱらって、家の庭に残飯を投げ入れ有子と都市春の関係にいやがらせをしてもジッと耐えた。



そのうち有子は身篭ったが、都市春の反対で堕ろしてしまった。その頃から有子はあらぬ妄想にとりつかれ、精神が不安定になっていった。都市春がタヨと体を重ねていると思いこみ、ひとりでネグリジェのまま真昼の街をフラフラさまよったりした。待つことの限界がきたのだ。



有子は入院させられた。経過は順調で退院の日が迫った頃、都市春が急死したことを聞かされた。有子は一瞬頭が空白になった。



通夜の日、有子は小田家を訪れ、慌てる弟子達を尻目に線香をあげたが、死顔はついに見せてもらえなかった。



「どうしてこんなに早く、地獄へ行っちゃったの?」とつぶやき、写真を見上げると、とめどなく涙が溢れ出した。



 



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