「あの頃のロマンポルノ」 by キネマ旬報

 

第31回『変態SEX 私とろける』

 日活ロマンポルノは生誕50年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。(これまでの掲載記事はコチラから

 今回は、秋本 鉄次氏による「変態SEX 私とろける」の記事を、「キネマ旬報」198011月上旬号より転載いたします。

 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく!

■日本映画批評『変態SEX 私とろける
 
 昨年、年頭の『聖処女縛り』を皮切りに、『少女縄化粧』に「密写! 緊縛拷問」……1年を通じて快投乱麻だった渡辺護。それに比べると今季は今ひとつ冴えが見られないなァと、映画を見る観客は、プロ野球を見に来る観客にも似て、ごひいき投手の快投、熱投が見られないと、ヤジのひとつも飛ばしたくなるもの。ちょうどパリーグで言えば、わが日ハム・ファイターズの昨年の20勝投手・高橋直樹が、今年は、アメージング・ルーキー木田勇にアオられたのか、エースの座から落ちてボクは「一年置きの投手だから」と嘆いているのに対してのファン心理に似ている。


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▲『変態SEX 私とろける』より夏麗子


 脱線はさておき、このところ続けて見た、渡辺護3本。まず『(裸)青春地獄』は、荒井晴()脚本、日野繭子主演……とほぼベストオーダーにもかかわらず、ピンク映画の内輪受けのみ目だち、オハナシの方は その小世界にこだわってグルグルとカラ廻りの失敗作だった。往年の名作!!『秘湯の町・夜のひとで』の「あっしら、しがねェピンク映画でござんす」の如くに突き抜けない限り、安易に現場の人間を登場させるべきではないと思う。<

 そこへ行くと『日本の痴漢』は、充分楽しめたが、それは今や出て来るだけで、観客にバカ受け(こちとらもギャハハハ!)の快優久保新二、独壇場の出血大サービス、ワンマンショーに寄るもので、これぞ渡辺護作品!ではなかった。

 そして、この3本目。脚本・監督渡辺護ということで、これは久々の「ドラマ」の渡辺護の本領を期待出来るかナと見参した。

 自分を誘拐暴行し、工場経営者の優しかった父を自殺に追い込み、財産を奪った後妻と使い込み社員(杉佳代子と国分二郎、例によって快調)への復讐を誓う娘。昨年、日野繭子の肉体を駆使、おんなの怨念劇を全面展開させた渡辺護。やはりこういうストーリーが氏には似合いだし、こちとらの好みでもあるし。

 重要なのは、もちろんヒロイン。この復讐のヒロインを演ずる新人・夏麗子。セーラー服姿は、せいぜい榊原郁恵ってトコでダサいのだが、夜の蝶として変身、昔、自分を犯した男も仲間に引き込んで、仇の二人にニコリともせず銃弾をブチ込む頃には、キツい化粧が妙に妖しく映え、ちょいと元東映の山内えみこ(現・恵美子)っぼくてわるくない。

 まだまだ、本領発揮とはいかないまでも、昨年の渡辺護のペースへ戻るキザシは充分に感じられた。来季は期待出来る、なんて先のことを言える程、こっちもそっちも余裕はないはず。今年だってまだ2ヵ月はある。まだまだ月1本ペースで、ピンクのマウンドに仁王立ちしてもらいたいベテラン・渡辺護。

 ヒロインは日野繭子
クンでも、朝霧友香ちゃんでも、この夏麗子クンでもいい。私の行き付け、銀座地球座か、中野ひかり座ででもぜひ、渡辺護の快投「ドラマ」にぜひ、この年内、出逢いたいものだ。お待ちしてます!

文・秋本 鉄次
「キネマ旬報」198011月上旬号より転載


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