WEB採録

2001.1.19(金) 於:渋谷パンテオン

日活ロマンポルノ生誕30年『サディスティック&マゾヒスティック』完成公開記念

「新世紀エクスタシーNIGHT」詳細レポート 

第1回(2/1up)

レポートその1 〜ロマンポルノを一晩中見るために、オヤジとギャルが集まった!
レポートその2 第1部トークショー〜中田秀夫はウミウシだった!

第2回

 『実録・阿部定』が終了すると同時に、場内から大きな拍手が湧き起こった。
ロマンポルノに傑作は数多いが、掛け値なしの傑作であるこの作品が今夜、満員の観客に驚きをもって迎えられたことを、大きな拍手は物語っていた。

山本晋也(監督): 山本晋也さて、いかがでした。田中登監督の『実録・阿部定』をご覧いただきました。
私、個人的にはこの作品は大島渚の『愛のコリーダ』よりも数倍素晴らしい作品であると思います。
主役の宮下の顔が、あの役を演じて終わった時に彼女も何かをひとつ得るんでしょうね、顔が変わってきてるのがよおくお分かりかと思います。

この事件があったときに私の母の話だと、電車に乗るとみんなあたしの顔をじいっとみるんだよ、電車がチンチン電車だろ、判るかい?昔の市電は発車する時にチンチンって鳴らすんですね、チンチンってやって車掌さんが出てきて「切らせていただきます」(場内笑)

これがですね、当時バカウケに受けたギャグでございます。
山本監督からゲストが紹介される。いずれ劣らぬ個性的な面々が次々に登場、ズラリと揃った様はまさに壮観!荒井晴彦氏はビールのパックを鷲掴みで現れ、気合充分に場内を沸かす。ビールが配られ、怒涛の第2部が始まった。

レポートその3 第2部トークショー 壱
〜飲んだくれトークが始まった!

 

ゲスト: 小沼勝(監督)、田中登(監督)、小原宏裕(監督)、荒井晴彦(脚本家)、相米慎二(監督)、中原俊(監督)金子修介(監督)、じんのひろあき(脚本家)、中田秀夫(監督)
司会: 山本晋也



田中登「660万の小品でもね、何10億かけた作品に勝つことは出来るかもしれない」

山本: 私、今拝見してて、田中さん…。
田中: (ビールに気を取られている)(場内笑)
山本: 田中さん、ってば、もう飲んでるの?。何年振りの遭遇ですか、劇場では?
田中: 25年ぶりです。1975年ですから、厳密にいえば28年ぶりですか。
ちょっと意地があってね、大きい画面でいつか見れる時まで見たくないっていうね、当時封切ってから実は見てなかったんですわ。
今日はこんな大勢のお客さんの前で、こんな大きい画面でね、お客さんとして見させて貰ってありがとうございます。本当に。
やっぱり映画館で見るってのはいいねえ。
山本: 思い出すエピソードなんかございますか?
田中:

『阿部定』はねえ、(予算が)664万9828円かなんかですよ(場内笑)。
これ憶えとこうと思ってね、664万幾らで作ってるんです。
僕がデビューした時の写真(『花弁のしずく』1972年2月公開)が750万だった。『阿部定』はなぜか100万少ないんです。まあ出る人数が少ないとかね、そんなことだったんでしょう。

制作の栗原さんて方が、もう亡くなられましたけど、 「田中ちゃんねえ、この作品は予算ないんだから、よーく考えてホントに撮りたいカットだけ撮ってね」って言われてねえ。足尾銅山でロケやったんですけど、あの日11カット撮ったんです。
ちゃんと11カットだけで撮ったらねえ、栗ちゃんに「田中ちゃん、ありがとう」って言われたんです。みんなそんな風にねえ、ひとつひとつ張りつめてましてねえ。

今日見ても感激したのは俳優さんですねえ。俳優さんの力がねえ、あらためて凄いなと。
山本さん言われたように、後半になってくるとつき抜けてね、宮下順子じゃなくて、定をも超えてなにか普遍性をもった顔になってくる。
江角さんと宮下さんが2人で、すっと実に映える。これだけのコンビネーションになるのは大変なんですね。

この前に神代(辰巳)さんの『四畳半襖の裏張り』で2人は共演してるんです。
そこで2人が出会ったことが僕の写真に引き継がれて、なんにも言わずに、そうめん1つ2人で啜るだけでね、なかなか現場で始めて出会っただけじゃあの雰囲気は出ないですよ。

で、僕の『屋根裏の散歩者』って映画で石橋蓮司と宮下順子に共演していただいたんですよ。そうしたらその後神代さんが『赫い髪の女』で順子と蓮司くんでやられたんです。 この写真もとってもいい写真なんです。
この時の2人がふっと、逢うときの何気ないショットがいいんです、やっぱり『屋根裏の散歩者』があったからだと思うんですよ。

つまり引き継いでいくっていうこと、ロマンポルノの流れっていうのは、どの作品がいいとか悪いじゃなくって、なにかこうやったことが次の人が引きうけて更に膨らましていく、 そういう意思が後ろにはたらいてるから、今改めて見ると俳優さんの凄さっていうか、ああ、だてやおろそかには俳優と接されんなあと。

それから、長くなって申し訳ない。スタッフですね。 665万でもねえ、隠れた予算があるんですよ。これはねえ、スタッフなんです。

今、改めて見てねえ、これは金に換算出来ない。660万の小品でもね、何10億かけた作品に勝つことは出来るかもしれない、という勇気をね、今日は少しく得させていただきました。

山本:

さっき手上げてもらったんですけど、今日来てるお客さんの3分の1はスクリーンでロマンポルノを見たことが無い世代の方なんです。

小沼さんどうですか。

小沼:

そうですね、さっき見ようと思ったら立見で出されちゃったんですけど。

だいたいロマンポルノ見る時は小っちゃくて地下に潜るような映画館だったんですよね。 こんなでっかいスクリーンで映して大丈夫なのかな、ってのはありますよね。こんな劇場で上映される作品は幸せだなって思います。
ちょっと、あの、『Mr.ジレンマン』はこのおっきい画面じゃどうかなって(場内笑)、不安はさっきからあるんですけどね。

山本: 荒井さんは、今日の『ジレンマン』もホン書かれてますけど、ロマンポルノってのはあなたにとってどんな存在でした?
荒井:

チョクさん(山本監督)とかとピンクやってたから、ピンクってパート・カラーじゃないですか。

日活がダメになってロマンポルノになって、オールカラーで、それはやっぱりいいなあっていう。
それとピンクのホン書いてても予算がなかなかね、(日活は)撮影所使えるでしょ。
ピンクだとキャバレーでも入口だけで中撮れないとか、日活は中ちゃんと撮ってるわけじゃないですか、そんなんで見てる時はずっと羨ましくて、あっち行ってやりたいなって思ってました。

あとお金もちゃんとくれるし。ピンクくれないじゃないですか。

山本: そうそう、俺確か荒井さんに脚本代1本分まだ…。
荒井: そうなんだよ。(場内笑)
山本: 借りがあるんだよ。すいません。 『慙愧縛り絵伝記』ってやつだよ。そうだよな確か。
荒井: そうそう。お願いしますよ。今お金ないんですよ。(場内笑)
山本: そういうことがありましたねえ。あれ私もギャラ貰ってない。
荒井: あれ赤字だったんですね。
山本: 赤字だとみんなスタッフがかぶっちゃうんだよ。なんでなんですかねえ、そうなっちゃうのは。

(続く)

 次回は相米慎二監督の助監督時代や、金子修介監督・女優に泣かされ事件の真相などがあけすけに語られます。 お楽しみに。

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