『女はバス停で服を着替えた』公開記念

 小川恵 & 小沼勝 トーク in バウスシアター
20年ぶりの恵さん笑顔で、バウスは幸せ色に!

「さすらいの恋人・眩暈」という映画は、言ってみれば古臭いシンプルなラブストーリーでなんのてらいも無い映画ながら、熱心な「信者」を沢山持っている映画です。 これぞ真のカルトといえるかもしれません。
主演の小川恵さんは、ピンクでデビューされ、ロマンポルノでも印象的な役を演じられました。

久々、なんてもんじゃないのです。
20何年ぶりで、その小川恵さんが公の席にいらっしゃるのです。
小川さんが場内に現れると、ちょっと不思議な空気に包まれました。
だって、小川さんは、本当にあの日のまんまなんです。
 

前半

小沼:
 
こんばんは。小沼です。
小川恵:
 
こんばんは。小川恵です。
(声が若い上にしっとりと艶やか。恵さんの声は耳に快いのです)
 


見ているだけで優しい気分になるんです。恵さん登場。
 

小沼:
 

今回こちらでロマンポルノをやるということで、3人の女優さんに声をかけたんです。
2人は風祭(ゆき)さんと木築(沙絵子)さん。
お2人は今でも現役の女優さんなんですが、今日お願いしましたこちらの小川恵さんは、もう完全に引退されている方ですので、ちょっと来ていただけないんじゃないかと思っていたんですが、来ていただけました。
小川恵さんおひさしぶりっていう感じで、お迎えしたいと思います。
 

小川:
 

ありがとうございます。

小沼
 

今日上映されます、小川さんの主演作『さすらいの恋人・眩(めまい)暈』という作品はビデオ化されたことがないんですね。劇場でしか見られない作品です。もう20何年前になるんですねえ。
 

小川

そうですねえ。もう細かいことは忘れてるかもしれません。
 

小沼: あまり年のことは言いたくないですけどね。まあ、久しぶりですので、今のお気持ちなど。
 
小川

はい。雨のところ、おいでくださってありがとうございます。
今日は20何年前の自分を見なければならなくって、でもお客様と一緒にと20年ぶりにこの映画を見られるということが、とても嬉しいです…。

はい。

小沼:

さっき恵さん、とっても緊張してるっておっしゃってたけれど…。
 

小川

緊張してます、はい。

小沼: 僕はあんまり緊張はしないんですけど、でも今日は恵さんいらしてくれまして興奮してます、すいません。
後で皆さんから恵さんへの質問なども受けつけたいと思いますのでよろしくお願いします。

 
小川

どんな質問でも、どうぞお受けします。

小沼: ホント?
小川

はい(笑)。

小沼: 僕はロマンポルノを多く、多くって言うか殆どロマンポルノを作ってきた人間なんだけれど、ロマンポルノには沢山の女優さんがいて、それぞれファンがいたんです。
僕も撮影してた当時はあんまり分からなかったんだけど、今思い返して見ますと、ロマンポルノのファンの種類って言うのは、極端に言うと2つに分かれると思うんです。
 


『さすらいの恋人・眩暈』より

一つは「谷ナオミ」ファン。それからもう一つが「小川恵」のファンですね。大きく分けるとこの2つのファンに分かれる。
谷さんファンっていうのは、ニュースキャスターの筑紫哲也さんとかDJの吉田照美さん、小説家で言うと西村京太郎さん、職業で言うと弁護士とかお医者さんとかにやたらファンが多いんです。言ってみればお金持ちでインテリ層、そういった人たちに圧倒的に人気があるんです。

それに比べて、恵さんの場合は働く若者たち、最近は死後になってるような気がしますけれど「ブルーカラー」の若者たち。
工員さんとか中華屋さんで働いてるような人たちの心に小川恵の存在っていうのは、深く刻まれていたと思っています。
「さすらい〜」の前に恵さんは中村幻児監督のピンクに出てらしたんだけど、映画に入っていくきっかけはどうだったんです?
 

小川 最初にグラビアをやっていたんですね。中村監督が電車の棚の上にある雑誌で私が出ているのを見つけて、電話をくださって。
始めてピンクに出ないかって言われた時は、「ピンク映画?どんな映画なんだろう」って思って、お話を聞いていると、とっても熱くって面白そうな世界だなあって思って、それからはもうひたすらのめり込んでしまったと(笑)。

なんだか、「本当の事が見えてくる」というそんな良さが凄くあって、その良さが見てくださる人に伝わればいいなっていつも思っていました。
 

  恵さんはゆっくりと、丁寧に言葉を確かめるように話されます。
 


 

小沼:
中村幻児監督の映画に出る前に、お芝居とかの経験はあったんですか。
 
小川: もうまったく無くて、だから最初はかなり、厳しかったっていうかかなり怒られたりしましたね。はい。
小沼: シナリオも小川さんをイメージして作ってる訳ではなかったと思うんだけど、苦労とかありました?
小川: ありましたねえ。自分と全然違うタイプの女の子だと思う人間を演じなければならなかったので…、うん、なんていうのか、必死でした(笑)。どうやってやるのか分からないですから。自分に無いものをどうやって出すの?って。
 
小沼: 始めての現場は、大人数じゃなくってチームワークのいい感じではあったの?
 
小川: そうですね。マイクロバス一台で動いてたんです。朝5時から終電まで。5日から長くて1週間で撮りおえてましたね。
小沼:

僕はご存知かどうか「SMの小沼」なんて言われたりしまして名誉なことのようなまあ迷惑なような(笑)ことで、他にもコメディとかアクション的ものだとかそれなりにやってるんですが、いわゆるまっとうな青春モノっていうのはこの「さすらい」1本なんです。
小川: そうですか。
 
小沼: まあ女教師モノだとかで高校生の描写とかあるんだけど、それはまあ青春モノとはあまり僕は思わなくて、青春の男女の話っていうのは他にあんまりない。っていうのは僕はそういう男女の話っていうのが苦手な方だったんですね。そういうのがあんまり自分には分からないって思ってた。そんな時に、この話貰って、女優は小川恵さんだと。

それまで、僕は女優さんっていうのをあまり信用できないと思ってた部分があるんです。
谷ナオミさんみたいなあるプロフェッショナルの方には沢山助けていただいたんだけど、新人の女優さんとかそれほど経験のない女優さんがロマンポルノには多いんですよ。

例えば、あるシーンで登場人物が朝起きて、台本には書いてないんだけどレモンを齧る、酸っぱい顔をしたらいいんじゃないかと前の晩に考えていって、実際に現場で女優さんでやってみる。そうすると「うっ」とやるんだけど苦しんでるような顔になってしまう。
ああ、こんなこと考えなきゃよかったと思いながら何べんもやってみるんだけど、ただ苦しい顔になってしまう。
自分がいかにいい考えだと思ってやっても、実際現実にはそれが実現するのが難しい。
こういうことが繰り返されて、ある意味では女優不信みたいな部分がずーっとあったんですね。
それが、こちらの小川恵さんと出会ったときにですね、「なんだ、そのまま撮ればいいんだ」と(笑)。
それまでの女優不信がすーっと、取れちゃった。
 


『さすらいの恋人・眩暈』より

そんな感じで撮影することが出来たんです。
ご自分では、そのようなことを、なんとなく分かりました?っていうか(笑)。
 

小川: そうですねえ…。
小沼: 役柄があってるかんじ?
小川: そうですね。このままやってみようって、思いました。始めて思いました。
それまで、役をどうしていいのかわからない時のばっかりで、本当に鍛えられてない女優なんだっていうのが自分でよく分かっていて、でも自分をどれくらい出せるのか、出してみたい出したいって思っていたんですね。そんなときにこの「眩暈」をいただきまして、ああ、そのままでいいんだ、と思いました。
 
とても、幸せ、でした。(ニッコリと笑う。)


 

小沼: 僕が、演出的にやったことはと言いますと、笑顔がね、とっても自然というか可愛いので、笑顔の数を減らした、ということがまずあったんです。
笑顔を出すシーンが多いとせっかくの笑顔が生きないから、このシーンは笑顔をやめてください、ここもやめてください、ということをやりました。
最後のラブシーンというかベッドシーンのところ、あそこはちょっと変えようと思って、ちょっと稽古した記憶あるんだけど、憶えてる?
 
小川: ええ、もう、かなり、テストしましたね(またニッコリと)。
 
小沼: 幻児さんの時には、(ベッド・シーンは)かなり上手というか得意だったんですか?
小川: いやあ、もともとあんまり、それほど上手ではなくって…。
小沼: ああそう。難しいよね、ベッド・シーンは。
 


難しいベッド・シーン!
『スケバンマフィア・恥辱』では主婦売春を演じた
 

小川: 裏話としては、足をつねられたりしてやってましたね。どうしても、そういう顔にならないって言われてて。
でも、まあ、えへへへー、一所懸命にやった方です。
小沼: あんまり僕ばっか訊いててもなんなんで、どなたか質問などありましたら、どうぞ。
 

(続く)

  今回はここまで。後半は観客との質疑応答と、トーク後の裏話をじっくりとお届けしますよ!
   
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